鞘の備忘録

そのとき思ったことや見たこと

ジェヴォーダンの獣 感想

★★★★★★☆☆☆☆ (6/10)

eiga.com

  • 前から見たかったものの配信されていなかった作品。4Kリマスターが上映中していたので見に行った

  • 18世紀のフランス・ジェヴォーダン地方で100人近い人間を襲ったとされる謎の生物「ジェヴォーダンの獣」伝承をベースとした作品 ja.wikipedia.org

  • 正直Bloodborneの狩人・ヤーナム一式の元ネタと謳われている、狩人の衣装が格好良かったのでそれ見れただけで結構満足してしまった www.playstation.com

  • 史実だと結局獣の正体はよくわからずジャン・シャストルという猟師に仕留められたとされているが、本作でも獣の正体は明言されず、アフリカから連れてこられた謎の生物に鎧を着せたものだと説明される。

  • 実はジェヴォーダンの獣は国王の権威失墜を企む秘密結社に調教されたものだと明かされ、主人公たちは秘密結社の野望を見事暴くと言うストーリー

  • Bloodborneに引きづられてダークファンタジーを期待していたから、思ったよりストレートな内容で肩透かしを食らった

  • 時代もあるのかもしれないがスローモーションの多様が絶妙にダサく、アクションもいまいち迫力がないように感じてしまった。ただやっぱりビジュアルは美しいからいっそ画で魅せる方向に振り切ってくれたほうが良かったかも

  • より暗い絵面で狩人がノコ鉈で怪物たちを切り刻んでいき、物語が進むにつれ邪神信仰のカルト教団による冒涜的な儀式の存在が明らかになり...めちゃくちゃ見たい

ボーは恐れている 感想

eiga.com

★★★★★★★★☆☆ (8/10)

  • 見た。約3時間のロングストーリーだが、それを感じさせないほど没入してあっという間に終わってしまった。ということもなく、体感2.25時間ぐらいで、長すぎ!と感じるほどではない程度には集中して見れた。

  • ささいなことですぐ不安を感じパニックになってしまう中年男性ボーの帰郷物語。話の一幕でボーが自分では何も決断できない大人になりきれていない人間で、そのような人格を形成したのは家庭環境、ひいては母親との確執に起因しているのがなんとなくわかってくる。そんな中、母親がシャンデリアの下敷きになり頭が潰れて死んだと知らせを受けて、呆然自失になるも急いで母親のもとへ向かうも...というのが大まかな流れ

  • ヘレディタリー/ミッドサマーも抽象的な表現が多かったけど、今作は過去一だった。序盤から明らかなボーの妄想が合間合間に差し込まれるからどこまでが現実なのかわからずさぁ考察してくださいという感じ


よくわからなかったものリスト

  • ボーの自宅に大勢が押し寄せてパーティーをしていたこと

    • 自分の内すら他人に易易と踏み荒らされコントロールできない心象を具現化したもの
    • 母親の差し金で本当に大勢が押し寄せてきていたもありえそうだけど意図がわからないからボーの妄想な気がする
  • 風呂場の天井に張り付いていた男

    • 何?
    • 天井から落ちてきた水滴から、ボーがこうだったら嫌だいう空想を描いたもの説
  • 森の劇団

    • 存在が都合良すぎる。ボーの境遇を重ねやすい劇の内容からして妄想っぽい
  • トニがペンキを飲んで自殺

    • ペンキを飲んで自殺って新しすぎてどういうことかわからなかった。なにかペンキに意味があるのか
    • トニの母親グレースは盗撮を教えてくれたり、モナの息が完全にかかったわけではない人なのでその娘のトニも演じているのではないはず。ということは本当にトニは絶望して自殺に及んだ?
    • 作中では水が象徴的によく描かれる。水→羊水→母親の庇護のメタファーで、水色のペンキを飲んで死ぬ=体の内まで母親の愛を注がれるが受け止めきれずに壊れてしまったボーの心象が妄想の中であのように現れた。
      • ペンキ飲んで自殺は意味不明なのでこれも妄想な気がする。その後のグレースが「お前の正体がわかった!」ってセリフも自分の期待に答えてくれないモナが言いそう
  • エレインの腹上死

    • モナか側近が殺した?
  • 屋根裏にいたやせ細った男

    • 屋根裏に閉じ込められたときに取り残されたボーの反骨心・勇敢さを表したもの
      • ボーが見ていた風呂に入るのを拒否していた兄とされている少年はボー自身で、その時持ち合わせていた母親へ立ち向かう勇気は屋根裏送りによって打ち砕かれた
    • 本当に兄は存在していたんだよ説
      • 最初あれは父親かと思ったけど、その後の男根モンスターが父親らしいので痩せた男は兄 or ボーのはず
        • アリ・アスターはディックジョークが好きで、あのモンスターは笑いどころらしい。ヴィジュアルは確かに面白かったけど、冷静に見たら滑稽な様がどうしようもなく不安な状況とそぐわなくてそのギャップが恐怖を煽るのがアリ・アスター的ホラー演出な印象があるから、普通に結構怖く思ってしまった。ヘレディタリーの裸の中年が並んでる光景もそこだけ見たら笑えるし

  • 現実とボーが見ている光景は違っているという前提を加味した上でもやっぱり全ては妄想だったんじゃないかと思う。母親から抑圧されていたこと、荒れたアパートに住んでおりセラピーに掛かっていること、本当に母親は死んでいたこと、発狂して湖にボートで進み転覆して死んだこと、リアルワールドにおける出来事はこれだけなんじゃないか

  • 母親に近づくほどボーの体験はより激しさを増していく。自らをすべて支配しようとする母親へ憎みつつ理想の息子になれない自分自身を激しく苛むボーから見えた世界を描いたのが本作なのかなと考えてしまう。

  • ボーは何を恐れているか?「母親の期待に裏切ること」というのが自分の結論になる。

  • 過去作でも家族関係の不和(特に母親周り)を描いてるからアリ・アスターは家庭環境が良くないのかなと思ったけど母親との仲は良好らしい。けどあの解像度を想像だけで生み出すのは無理だと思うから、少なからず心に浮かんだ黒い思いを絞り出して限りなく膨らませてるんだろうなとは思う。

  • 長いけど見てて退屈はしなかったし、見終わったあと自分で考察したり他の人の解釈聞いたりする楽しみもあるからこういう抽象さがある作品はやっぱり好きだな

老人Z 感想

www.amazon.co.jp

★★★★★☆☆☆☆☆ (5/10)

  • 見た。長すぎずあらすじ的にも適度に軽そうなのが今日の気分にあってる気がしたから勢いで再生をクリック

  • 看護学生である主人公・晴子が世話しているおじいちゃんが全自動介護ロボのモニターに半ば強引に選ばれたものの、実験台扱いに苦しむおじいちゃんと介護ロボットが備える高度なAIが同調して大暴れする...みたいな内容

  • ストーリー的にはあらすじを見て予想されるものと外れずまっすぐな進み方だった(正直言うとながら観だったから全編通してちゃんとは見てない)

  • 大友克洋原作だけあってロボットが大暴れするシーン、機体の個々の部品の動きや細かい軋み、動作の重量感や吹き飛ばされる瓦礫はAKIRAっぽさを感じた

  • なんとなく既視感あるけど何だっけと思ったけど攻殻機動隊SAC第二話の「暴走の証明」*1だった(生前機械になることに憧れていた男の脳が戦車に移植され暴走する話)あれからエモさと小難しさを引いて喜劇にしたのが本作という感じがする

  • 30年以上前の作品だからと言うのもあると思うけど、昔の作品ほど女性キャラの「女性性」が強いなと思ってしまう。あんまりこういうジェンダー的な見方をしたくないが今日の世界的なテーマなので嫌が応にも意識してしまう。

  • でもやっぱり自分は女性の女性らしさは愛らしいと思うし、男の願望的を集約したような純真で献身的な晴子は愛らしいなと感じさせられる。あと全般的にやたら肉感的な気がする。あと正直言うと見ようと思った最大の決め手はビジュアルポスターの絵がどストライクだったからというのはある

    これ

*1:SACが2002年なので1991年の老人Zが先

引出始めという言葉をみんなもっと知るべき

 年末年始の幸福な一週間の終わりは脱出ではなく追放だ。
「仕事初め」なんて能動的な言葉より、安寧の地から引出りだされる「引出初め」の方が絶対に合ってる。
仕事納めなんて見ただけで理解できる単語はダサい。「引出初め」、一見して意味を想像させる単語は楽しい。

以下、日本國言之葉辞書大系からの引用

"引出"とは引き出すの意。年末年始の長期休暇後は始めに行うは仕事の続きを思い出す、すなわち記憶を引き出すことから、年明け最初の仕事を「引出初め」と呼ぶ。

これでいい。仕事始めなんて情緒もクソもないおもんない不快単語を使うべきじゃないよみんな。